報道関係各位
高校生が開発した手のひらサイズの宇宙線検出器、CERNでの性能評価成果が国際学術誌に掲載
高校生チーム「Sakura Particles」が開発した、手のひらサイズの2次元放射線イメージング検出器「SAKURA」の研究成果が、国際学術誌 Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A(NIM-A)に論文として掲載されました。本検出器は、2024年9月にスイス・ジュネーブのCERN(欧州合同原子核研究機関)で性能評価試験を実施したもので、検出器の設計・製作から、ビーム試験、データ解析、論文執筆に至るまでの全工程を高校生5人チームが行いました。
- 掲載誌
- Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A(Elsevier)
- 論文タイトル
- “A Compact Two-Dimensional Radiation Detector for Educational Applications”
- 掲載日
- 2026年5月19日
- DOI
- 10.1016/j.nima.2026.171664
- 巻号
- Vol. 1090, 171664
高校生チームがCERNでの実験に採択されるまで
日本の高校生チーム「Sakura Particles」は、CERN(スイス)が行う高校生国際素粒子実験コンテスト Beamline for Schools(BL4S)2024 に応募し、461件の中から最優秀賞(日本・エストニア・米国の3チーム)に選出されました。日本の中高生が大型加速器施設で素粒子実験を行うのは初の快挙です。
採択を受け、Sakura Particles は2024年9月、スイス・ジュネーブの CERN に渡り、自分たちで開発・製作した手のひらサイズの宇宙線2次元イメージング検出器「SAKURA」を、T10ビームラインに持ち込んで性能評価試験を実施しました。検出器の設計・製作から、現地での実験、データ解析に至るまでの全工程を、高校生が主体的に担いました。
この検出器がなぜ重要なのか
SAKURA が取り組んだのは、教育現場ではこれまで手の届かなかった「宇宙線イメージング」の壁です。加速キッチンでは手のひらサイズの宇宙線検出器を中高生にこれまで提供してきましたが、単一シンチレータの出力しか測れないため粒子の飛跡をとらえられず、ミュオグラフィ(宇宙線を用いた透視技術)のようなイメージングには使えませんでした。一方、既存のミュオグラフィ装置は高価・大掛かり・操作も複雑なため、利用は一部の研究機関に限られていました。
そこで Sakura Particles は、手のひらサイズで簡易的に検出位置がわかる2次元イメージング検出器 SAKURA を開発しました。宇宙線で発光する結晶25個を5×5に並べ、その上下左右に4つの光センサーで得られた光強度比から、どの結晶を宇宙線が通ったかを判別する方法を考案し、検出器を一から設計・製作しました。
CERNでのビーム実験による評価
CERN では T10 テストビームラインにて、運動量 5 GeV/c のミュオンビームを13箇所の所定位置に照射し、CERN から提供された高精度なイメージング検出器「ディレイワイヤーチェンバー」と SAKURA のイメージング結果を比較しました。その結果、位置感度として X = 13.4 mm、Y = 7.68 mm という値が得られました。
また、得られたイメージング結果は、自作のモンテカルロ・レイトレーシングによる光子伝播シミュレーションでの推定と概ね一致していることを確認しました。
意義と今後の展望
SAKURA は、約15万円という低コストで、簡易的な宇宙線イメージングが可能であることを示しました。これにより、高校生でも簡易的なミュオグラフィを教室や家庭で行えるようになります。教育用途で広く使われる FPGA 搭載 ADC ボード Red Pitaya を活用することで、データ取得や信号処理を「ブラックボックス」にせず、コーディングやデータ解析の経験がない生徒でも、自ら測定画像を再構成できます。
今後は、本検出器を用いて高校生が宇宙線イメージングを探究する機会の拡大を目指します。加速キッチンの教育アウトリーチ・ネットワークでは、これまで300台超の 検出器 を貸し出し、200名以上の生徒の家庭での実験を支援してきました。SAKURA により、校舎構造のミュオグラフィ推定といった、生徒主導の探究学習がさらに広がることが期待されます。
Sakura Particles のメンバー
※所属は実験参加時点および論文投稿時点のもの
加速キッチンについて
加速キッチンは、中高生に素粒子検出器を無料で貸与し、研究機関と連携した宇宙・素粒子の探究活動を支援する組織です。これまで300台超の検出器を貸し出し、200名以上の生徒の探究を支えてきました。参加費は無料です。