Seeing is believing.

宇宙から降りそそぎ、いま、あなたの頭を毎秒1個ほど通り抜けている粒子——宇宙線。霧・電気信号・音・光・振動、5つのちがう方法で「来た!」を感じてもらい、来場者ひとりひとりの「いちばん感じられた方法」を集めました。説明員は、自宅で宇宙線を測り続ける中高生です。
昨年(2025年)のサイエンスアゴラでは、KEKと共同で「音が出る宇宙線の検知器」を出展しました。視覚障害のある方にも宇宙線を楽しんでもらいたい、というインクルーシブな展示です。
そこで得たフィードバックが、今年の出発点になりました。視覚障害といっても、点字を読む人、拡大鏡を使う人、音声で聞く人——受け取り方はさまざまで、障害の中にも多様なバックグラウンドがあります。ひとつの「正解の感じ方」を用意するのではなく、複数の「感じられ方」を並べて提示することが大事なのではないか。その気づきから、今年は5つの異なるアプローチで宇宙線を感じられる展示に組み替えました。
問いはシンプルです。目に見えない・感じられないものが「来た」と、人はどのように直感的に受け取るのか。視覚障害のある方に限らず、多様なバックグラウンドや幅広い世代の方から意見を集め、放射線・素粒子を実感する人間のメカニズムに迫ろう、というのが今回の趣旨でした。


どの装置も「宇宙線が来た瞬間」を、それぞれ別の感覚に翻訳します。装置の多くは、加速キッチンで探究活動をしている中高生と、それを支える大学生・大学院生が自分たちで組み立てた検出器です。
Seeing is believing.
オシロスコープみたいで、生きているかんじがあった
SF映画にあった音だ!
くるくるまわっておもしろかったから。
ブルブルしてておもしろかった
受付で、宇宙線の旅の「搭乗チケット」をお渡ししました。5つの装置を回り、宇宙線が感じられたものにチェック。いちばん感じられたものをひとつ選んでコメントを書き、半券をちぎって、同じ色のボードに貼っていく——それがこの旅のぜんぶです。
チケットを「アンケート用紙」ではなく「旅の道具」にしたことで、来場者は5つの装置をすべて試したくなり、ボードを見れば他の人がどこで感じたかも一目でわかります。貼られた半券は、そのまま私たちのデータになりました。
用意した600枚のチケットは会期中に配り切り、その後はチケットをお渡しできないまま体験していただいた方もいました。実際に5つの装置に触れた方は、これを上回ります。



結果として、非常に多くの知見が得られました。まず、いちばん驚いたのは「偏らなかった」ことです。
人間として最も感じやすい方法があるはずで、回答はそこに大きく偏るのではないか。
霧・電気信号・音・光・振動、どれも満遍なく「これが一番感じられた」と選ばれた。未知のものをどう受け取るかは、その人の背景によって非常に多様だった。

音は今回、電子音として表現しました。すると「ピコピコ音がすごくSFチックでイメージが湧きやすい」といった、音色そのものに対する具体的なフィードバックが多く得られました。「何の音で知らせるか」も設計の一部だとわかりました。

光る装置には「ミニクラゲ」のような、1分に1回くらいしか光らない有効面積の小さな検出器を使い、それをたくさん並べることで「たまにどれかが光る」ようにしました。この見せ方が、宇宙線は常にまんべんなく波のように来ているのではなく、粒子としてピンポイントでそこに来ている——というランダム性を実感させ、「ハッとさせられた」というフィードバックにつながりました。

今年も視覚障害のある方にたくさん来ていただき、直接フィードバックをいただきました。今回新しく導入した「振動する」しくみは、音以上に、目が見えない中でも感じやすいというご意見をいただけました。「石を近づけると振動が大きくなる」という変化も、手のひらで直感的に伝わったようです。

電気信号をそのまま見せる装置には、「オシロスコープみたいだ」「最も定量的に観測できる」という評価をいただきました。ピークの高さで宇宙線と環境放射線を見分けられることが、理科好きの来場者や大人の方に特に響いたようです。

霧箱は今回も根強い人気でした。「やっぱり視覚!」「Seeing is believing」といったコメントに加え、「放射線を人生で初めて見ました」という声も。存在を確かめるという意味では、目で見ることの説得力はやはり大きいと再確認しました。

加速キッチンは、中高生を対象に素粒子探究の支援をしています。年間数百人の中高生が自分で検出器を組み立て、自宅で宇宙線を測っています。今回展示した検出器も、そうした中高生と、それを支える大学生・大学院生がつくったものです。
自分たちの検出器や宇宙線観測を、どう伝えればもっとよく伝わるのか。今回も中高生自身がお客さんの前に立ち、検出器について紹介し、直接意見をもらいました。対面で率直な反応を聞ける機会は、探究を続ける中高生にとってとても貴重です。
宇宙線を測っている中高生と市民との対話——サイエンスアゴラという場ならではの意義が、大きく生まれた2日間でした。


















