CERN (ヨーロッパ合同原子核研究機構), DESY (ドイツ電子シンクロトロン) 主催の世界中の高校生が素粒子実験を提案するコンテスト「Beamline for Schools」のプログラムマネージャーであるSarah Maria Zoechling、サポートサイエンティストであるMartin Schwinzerl へのインタビューです。
Program Manager: Sarah Maria Zoechling
自己紹介をお願いします。
私は現在、Beamline for Schools(BL4S)のプログラムマネージャーを務めています。以前は博士課程で異なる分野の研究を行っていましたが、教育や若い世代の科学教育に貢献したいという思いで、このプログラムに携わることになりました。
Beamline for Schoolsについて教えて下さい。
「Beamline for Schools(BL4S)は、高校生が実際の粒子加速器を使った実験提案を行い、それを実現する機会を提供するプログラムです。提案が採択されたチームは、CERNや他の施設で自分たちの実験を実施することができます。このプログラムは、物理学の知識を深めるだけでなく、科学の進め方を学ぶ場でもあります。特に、日本からの参加はまだ少ないものの、遠方の国から来る学生たちの熱意は特別であり、CERNも資金援助などで全面的にサポートしています。
2024年度に通過したSakura Particlesの印象について教えて下さい。
物理の世界では男性が多いことが多いため、全員が女子であるSakura Particlesを迎える事はとても嬉しいです。Sakura ParticlesとMarvericksどちらにもいえる事なのですが、どちらのチームもCERNに来る前から彼らの検出器の動かし方やデータの扱い方をよく確かめていたことです。CERNで実験する2週間はあっという間に過ぎてしまうので、これはとても役立ちました。 提案の良し悪しは様々な要因によりますが、今年は特に、提案段階で既に検出器の仕組みやデータ分析について深く理解していることを重視しました。CERNでの2週間は短いですが、事前にしっかりと準備をしているチームは、その時間を最大限に活用できるからです。
Beamline for Schoolsを目指す日本の高校生へメッセージをお願いします。
科学の仕組みを理解することは、人生において非常に重要です。BL4Sのようなコンペティションは、自分が興味を持つ研究課題を自由に設定できる素晴らしい機会です。科学が社会にどのように貢献できるかを学ぶことで、新たな可能性が開けるはずです。たとえ難しそうに感じても、一歩踏み出す勇気を持って挑戦してほしいです。
Support Scientist: Martin Schwinzerl
まず自己紹介をお願いします。
Beamline for SchoolsのSupport Scientistで選ばれた学生たちが自身のアイデアを実験で実現するのを手助けする役割を担っています。今年で3年目になります。私はもともと電気工学を学び、その後物理学を専攻しました。長い間産業分野で働いていましたが、30代後半に再び科学の世界に戻りたいと決意しました。そして7年前に現在の職場であるCERNに運良く採用され、今日に至ります。
提案書を読む中で、印象的だった点はありますか?
提案書には、多くの独創的なアイデアが詰まっています。今年のSakur Particleの提案書は、非常に質の高いものでした。もちろん、提案がそのまま実現するわけではなく、テスト実験を通じてアイデアを改良する必要がある場合も多々あります。それでも、学生たちの情熱と努力が伝わる内容でした。
国際的に高校生チームを募集することでどのような面白さがありますか?
各国の文化や教育の違いが、学生たちの視点やアイデアに反映されている点です。たとえば、南アフリカのチームがダイヤモンドを使った実験を提案したことがありました。このように、予想外のアイデアが生まれるのも国際的な交流の醍醐味だと思います。
これから参加を目指す学生たちへのアドバイスをお願いします。
現実的に可能かどうかだけでなく、自分たちが本当に挑戦したいことを考え、それを提案書に反映させてください。そして、失敗を恐れないでください。科学の世界では、何かを証明するだけでなく、何かが「間違っている」と示すことも重要な成果です。
Beamline for Schoolsに関する貴重な情報を伺うことができました。現地でお会いした方々も共通して強調するのは、選考の運要素の強さです。そんな中でも、どんなプロポーザルが目に留まりやすいかのヒントはいただけたのではと思います。(加速キッチンでは引き続きBeamline for Schoolsへの挑戦を支援していく予定なので、興味のある方はinfo@accel-kitchen.comまでご連絡ください。)