CERN (ヨーロッパ合同原子核研究機構), DESY (ドイツ電子シンクロトロン) 主催の世界中の高校生が素粒子実験を提案するコンテスト「Beamline for Schools」のプログラムマネージャーであるSarah Maria Zoechling、サポートサイエンティストであるMartin Schwinzerl へのインタビューです。今年の優勝チーム「Sakura Particles」2023年度リーダー (2024年メンバー)の貫輪、2024年のメンバーである佐々木柚榎がお届けします。
まず自己紹介をお願いします。
私は現在Beamline for schoolsのプログラムマネージャーをしています。世界中から生徒が応募してくれること、そしてそれを可能にしている資金援助をとてもありがたく思っています。
BL4Sのサポートサイエンティスト(主に優勝チームの提案を実現する手伝いをするCERNの科学者)で、今年で3年目になります。元々は別の場所で電子工学分野に従事していましたが、30代後半に科学者になりたいと再び思い偶然にもCERNに迎え入れてもらいました。
Beamline for schoolsの目的は何ですか?
Beamline for schoolsは高校生対象の物理学コンテストです。高校生はCERNまたはDESYで実際の加速器を用いて行う実験を提案できます。
Sakura Particles についての感想を教えて下さい。
物理の世界では男性が多いことが多いため、全員が女子であるSakura Particlesを迎える事はとても嬉しいです。Sakura ParticlesとMarvericksどちらにもいえる事なのですが、どちらのチームもCERNに来る前から彼らの検出器の動かし方やデータの扱い方をよく確かめていたことです。CERNで実験する2週間はあっという間に過ぎてしまうので、これはとても役立ちました。
物理学が異なる場所に住む高校生たちを繋げていること、チームメンバーそれぞれの行っている研究の完成度に感銘を受けました。そしてそれを支える加速キッチンの取り組みが素晴らしいと思いました。しかも、加速キッチンのサポートするチームは毎年ショートリストに選ばれていますよね。今年のプロポーザルでは、プロポーザルの段階で、加速器施設で事前実験を行っていたことにも驚かされました。優勝チームの選考は幾つかのステージに別れていて、私は最終選考前にsakura particlesのプロポーザルを読みましたが、それが最後まで残ることに驚きはありませんでした。
プロポーザルにはどのようなことを期待しますか
第一に強調したいのは、優勝チームは、素晴らしいプロポーザルを提出しただけでなくとても幸運であるということです。どのプロポーザルが優位に立つかはその年によって異なるだけなく、いろんな要因があり、どのチームが優勝するかを予測するのは難しいです。2年前に優勝したフランスのSupercoolingsのプロポーザルは詳細を欠いており、学生の作文のようなものでしたが、とても創造的でプロポーザルを読んだ全員が彼らを招待したいと言うくらいでした。また、ショートリストに入ったチームのプロポーザルリストを公開しないのは、それらのプロポーザルのレベルは優勝チームと同程度だからです。Sakura Particlesがそうしたように、私たちはショートリストに入ったプロポーザルを洗練させ、再チャレンジすることを奨励しています。
新しい視点のアイデアは優勝の可能性が高いですか
そうですね、クリエイティブで少々独特であることは重要です。例えば、何かを証明するアイデアだけでなく、何かを反証する提案もいいと思います。それは科学においてとても重要なことながら、これまで非常に少数のプロポーザルしか見たことがありません。また、これはBL4Sとしてというより個人的な考えになりますが、応募にあたって学生たちは第一に何をしたいか、何を学びたいかを考えるべきだと思っています。
BL4Sに申し込むか悩んでいる生徒にメッセージをお願いします
BL4Sが人生の何に役立つのか疑問に思う生徒もいるかもしれません。しかし、科学研究が実際にどういうものか、科学者が実際に何をする人なのか、ということを学べるチャンスとして、非常に大切だと考えています。そうして科学と社会をつなぐ人を増やすことで、科学に懐疑的ではなく、協力的な人が増えると良いと思っています。
Beamline for Schoolsに関する貴重な情報を伺うことができました。現地でお会いした方々も共通して強調するのは、選考の運要素の強さです。そんな中でも、どんなプロポーザルが目に留まりやすいかのヒントはいただけたのではと思います。(加速キッチンでは引き続きBeamline for Schoolsへの挑戦を支援していく予定なので、興味のある方はinfo@accel-kitchen.comまでご連絡ください。)