報道関係各位
目に見えない素粒子17種類を、キャラクターとして描く ─ 『イラスト素粒子図鑑』を創元社より刊行
加速キッチン代表の田中 香津生(たなか かづお)が、イラストレーター・古代エジプト文化研究家の橋本 ゆきみ(はしもと ゆきみ)氏との共著で、書籍『キャラクターでわかる イラスト素粒子図鑑』を2026年8月19日、創元社より刊行します。発見済みの17種類の素粒子と、ダークマターなどの未発見・想像上の粒子をキャラクターとして描き、質量・寿命・電荷を「種族データ」として一覧できるようにした図鑑です。素粒子の世界を描いた地図から、量子力学や加速器を扱う32本のコラム、国内の加速器施設の見学案内まで収めた、A5判128ページ。子どもから大人まで、素粒子物理学にはじめてふれる人に向けた一冊です。
ものは、どこまで小さく分けられるのか
紙を半分に切り、その半分をまた半分に切る。それを繰り返していったら、最後はどうなるのか。子どもがふと口にするこの問いの先に、素粒子物理学があります。しかし素粒子は大きさが「0」で、形もなく、目で見ることができません。だからこそ、いちばん興味をもった人がいちばん近づきにくい分野でもありました。
本書は第1部で、その問いを人類がどうたどってきたかを追いかけます。16世紀に顕微鏡が発明され、17世紀に植物が細胞でできていることがわかる。20世紀の電子顕微鏡が原子を見せ、その原子が原子核と電子に、原子核が陽子と中性子に、さらにその中のクォークへと分かれていく。見る道具が変わるたびに、世界の最小単位が更新されてきたという道のりです。
ものをどんどん小さく分けていくと、最後はどうなるのだろう? そもそも、どうしてこの世界には「もの」があるんだろう?
私自身、6歳のころにこの問いが頭から離れず、夜も眠れなくなりました。大人に聞いてもちゃんとした答えはもらえず、悶々とするばかり。
……そこで思いついたのが、本書のアイデアです。「素粒子をキャラクターにして、ファンタジーの世界として楽しんでもらえばいいんじゃないか?」
── 本書「はじめに」より(田中香津生)人は昔から、精霊や妖怪といったキャラクターを思い描くことで、目に見えないものを手のとどく形にしてきました。素粒子も同じように、親しみのもてる姿を通じてなら、その世界にふみ込んでもらえるのではないか ── 本書はこの発想から生まれています。
著者の橋本ゆきみ氏は、児童書『ゆるゆる神様図鑑 古代エジプト編』などを手がけるイラストレーターで、古代エジプトの美術表現における宗教・呪術を研究してきた研究者でもあります。本書のキャラクターに動物の耳や翼、古代文明を思わせる衣装が織り込まれ、背景に手書きの場の理論の数式が敷かれているのは、その視点によるものです。文系出身の児童書作家と、理系の研究・教育者の共作として、本書は制作されました。
17種類の素粒子を、「科」「族」「世代」で分ける
本書の中心となる第2部は、生物図鑑の形式を借りています。素粒子は動物が「イヌ科」「ネコ科」に分かれるのと同じように、フェルミ科とボース科に大きく分かれ、さらにクォーク族・レプトン族・ゲージ族・スカラー族へ、クォークとレプトンはそれぞれ第1〜第3世代へと枝分かれしていきます。実際の素粒子物理学の分類を、そのまま図鑑の階層に置き換えたものです。
キャラクターデザインは、古代エジプト文化研究家でもある橋本ゆきみ氏によるもの。
取り上げるのは、アップ・ダウン・ストレンジ・チャーム・ボトム・トップの6種類のクォーク、電子・ミュオン・タウオン・ニュートリノのレプトン、グルーオン・フォトン・ウィークボソン・ヒッグス粒子 ── あわせて17種類。名前の下には「素粒子の世界でおなじみの名コンビ」のようなキャッチコピーが添えられ、キャラクター自身のセリフも入ります。左ページで人物として出会い、右ページでその物理をマンガと図で説明するという組み立てが、全ページで一貫しています。
32本のコラムが、キャラクターの背後にある物理をつなぐ
キャラクターのページのあいだには、32本のコラムがはさまれています。宇宙の創生と素粒子のはじまり、反粒子、「無」から生まれる粒子、シュレーディンガーの猫、電磁波スペクトラム、ファインマン・ダイアグラムの読み方。さらに、スーパーカミオカンデや南極の IceCube、300 km 先へニュートリノを飛ばす実験、素粒子で医療をささえる技術、雷の中で起きている素粒子反応、重力波の観測、量子テレポーテーションと量子コンピューターまで。
難しい概念ほど、身近なものに置き換えられています。たとえばクォークの6種類の違い(フレーバー)は、アイスクリームの味として描かれます。−1/3 の3種はチョコミント・ブルーベリー&チーズ・抹茶、+2/3 の3種はバニラ・ストロベリー・チョコレート。世代はクリーム系・フルーツ系・リッチ系の台に並びます。同じ状態に2つの粒子が入れないというパウリの排他律も、「1セットに同じ味は1つまで」というアイス屋のやりとりで説明されます。
まだ見つかっていない粒子にも、姿を与える
第2部の最後の章は、ダークマター、ダークエネルギー、グラビトン、タキオン ── まだ発見されていない、あるいは想像上の粒子にあてられています。
読んだあとに、実際の素粒子に会いに行くために
第3部「素粒子に出会おう」は、本を閉じたあとのための章です。加速器を見に行こうでは、ふだんは研究者しか立ち入れない施設が公開日には一般も見学できることを、写真と所在地つきで紹介しています。取り上げられるのは、KEK(茨城県つくば市/1971年設立。SuperKEKB と Belle II 測定器)、J-PARC(茨城県東海村)、スーパーカミオカンデ(岐阜県飛騨市神岡町/地下1000 m)、RIビームファクトリー(理化学研究所/113番目の元素「ニホニウム」を発見した線形加速器 RILAC と、超伝導リングサイクロトロン SRC)の4施設です。
加速キッチンは、中高生に素粒子検出器を無償で貸与し、研究機関と連携した宇宙線・素粒子の探究活動を支援してきました。これまでに300台超の検出器を貸し出し、200名以上の生徒の探究を支えています。本書は、その入口にあたる一冊です。図鑑でキャラクターに出会い、コラムで物理にふれ、第3部で実際に測りに行く ── そこから先は、加速キッチンの探究プログラムが引き受けます。
本書の著者
田中は1986年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。中学・高校での教員経験をもとに、素粒子探究を支援する加速キッチン合同会社を2020年に設立しました。橋本氏は駒澤大学大学院人文科学研究科修士課程修了、修士(歴史学)。遺跡の三次元測量にも参加し、デビュー作『ゆるゆる神様図鑑 古代エジプト編』(共著)のほか、歴史監修やミュオグラフィアート出展などを行っています。
執筆協力:須藤舞子(Kazahana)/作画協力:橋本利香/装幀・組版:中島敦貴(文図案室)
本書の構成
ものをどこまで分割できるのか、という問いから出発し、原子・原子核・陽子・中性子・クォークがどう順に見つかってきたかをたどります。あわせて、素粒子物理学で欠かせない「小さい数字・大きい数字の書きかた」も扱います。
本書の中心。「素粒子の世界」の地図と「図鑑の見かた」に続き、クォークの章(アップ/ダウン/ストレンジ/チャーム/ボトム/トップ)、レプトンの章(電子/ミュオン/タウオン/ニュートリノ)、ゲージ粒子・スカラー粒子の章(グルーオン/フォトン/ウィークボソン/ヒッグス粒子)、未発見・想像上の粒子の章(ダークマター/ダークエネルギー/グラビトン/タキオン)の4章。あいだに32本のコラムが入ります。
加速器を見に行こう/素粒子を計測しよう/霧箱をつくってみよう。読んだあとに、実際に素粒子を見て、測るための章です。
加速キッチンは宇宙・素粒子分野を自分たちの力で探究できる世界をつくることを使命として、理工学系や様々な分野の大学生・大学院生を中心として活動しています。この活動は徐々に広がり現在では世界でも最大の素粒子探究ネットワークとなりました。素粒子を測定してその極小の世界の性質を調べたい中高生のために安価で手軽に使える素粒子検出器を配布し、研究者や様々な市民科学プロジェクトと中高生をつなぎ、世界中の研究者や中高生と共同研究をするきっかけを提供しています。accel-kitchen.com
加速キッチンについて
加速キッチンは、中高生に素粒子検出器を無料で貸与し、研究機関と連携した宇宙・素粒子の探究活動を支援する組織です。これまで300台超の検出器を貸し出し、200名以上の生徒の探究を支えてきました。参加費は無料です。
本件に関するお問い合わせ先
- 加速キッチン合同会社 広報担当:須藤舞子
TEL:03-4500-0403/E-mail:info@accel-kitchen.com - 高解像度の書影・誌面画像のご提供、著者へのインタビュー手配、書評用見本のご相談に対応します。
- 書籍の販売・流通に関するお問い合わせは、発行元の創元社へお願いいたします。