報道関係各位
大阪大学SEEDSと連携し、高校生が放射線検出器を組み立てて測定 ─ 核物理研究センター(RCNP)で加速器も見学
加速キッチン合同会社(代表:田中香津生)は、大阪大学SEEDSプログラムと連携し、2026年11月3日(火・祝)に大阪大学 核物理研究センター(RCNP)で、放射線検出器の組み立て・測定体験と加速器見学を行いました。参加者はCsI(ヨウ化セシウム)検出器を自分たちで組み立て、モナズ石・人形石・湯の花・塩の4つの試料を、ガンマ線のスペクトルから見分ける体験に挑戦。測定の時間とは交代で、RCNPの加速器施設も見学しました。
- イベント名
- 放射線検出器を製作し加速器施設で測定しよう大阪大学SEEDS × 加速キッチン 企画イベント
- 日時
- 2026年11月3日(火・祝)10:00〜16:30
- 会場
- 大阪大学 核物理研究センター(RCNP)大阪府吹田市・吹田キャンパス
- 参加者
- 大阪大学SEEDSプログラム受講生
- 内容
- CsI検出器の組み立て/ガンマ線スペクトルの測定と試料の同定/RCNPの加速器見学/結果の発表
- 協力
- 大阪大学SEEDSプログラム事務局、大阪大学 核物理研究センター(RCNP)
つくって、測って、見学して、語る1日
大阪大学SEEDSは、大阪大学が高校生を対象に実施している科学技術人材育成のプログラムです。加速キッチンはこれまでも、SEEDSと連携して高校生の探究を支えてきました。今回はその連携として、検出器づくりから測定、加速器の見学までを1日で体験するワークショップを開きました。
ねらいは、「見るだけ」「聞くだけ」で終わらせず、自分で作った検出器で、自分で測ることです。加速器の見学も、この測定体験と連動させることで、現場で使われている検出器と、手元の検出器を結びつけて考えられる機会にしました。
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検出器を組み立てる
数人ずつのグループに分かれ、グループごとに1台のCsI検出器を、部品の状態から組み立てました。
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4つの試料を測る
組み立てた検出器で、A〜Dのラベルだけが付いた4つの試料のガンマ線スペクトルを測りました。
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加速器を見学する
測定の時間と交代で、RCNPの加速器施設と、実際に使われている検出器や実験装置を見学しました。
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結果を持ち寄って発表する
各グループのスペクトルを大きな画面に並べて見比べ、どの試料がどれだと考えたのかを、その根拠とともに発表しました。
検出器を、自分たちの手で組み立てる
午前は、検出器の組み立てから始まりました。使うのは、放射線が当たると光る結晶(シンチレータ)のCsIと、その光を電気信号に変える素子を組み合わせた、手のひらサイズの検出器です。基板に部品を取り付け、ケースに収め、パソコンにつないで動作を確かめるところまでを、グループで進めました。
どのテーブルでも、部品を手に取り、向きや配線を確かめ合いながらの作業が続きました。完成した検出器がスペクトルを描き始めた瞬間は、各グループにとって最初の山場でした。
スペクトルだけを頼りに、「どれが何か」を当てる
組み上がった検出器で測ったのは、モナズ石、人形石(にんぎょうせき)、湯の花、塩の4つの試料です。試料はA〜Dのラベルだけで渡され、どれが何かは明かされていません。手がかりは、検出器が描き出すガンマ線のスペクトル(放射線のエネルギーごとの数の分布)だけ。ピークの位置や形を、ほかの試料や、グループどうしで見比べながら、A〜Dの正体を推理していきます。
テーブルのあちこちで、物理の議論が飛び交いました。なかでも湯の花に特徴的な、低いエネルギー側のピークを観察できたときには、スペクトルの読み方についての議論がいっそう深まりました。
「物質によって、出てくる放射線のエネルギーが違う」ということを、教科書の説明としてではなく、自分たちの検出器が描いたグラフとして確かめられたことが、この時間の一番の収穫です。
手元の検出器と、現場の検出器をつなげる
測定の時間と交代で、参加者はRCNPの加速器施設を見学しました。RCNPの方の案内で、大きな電磁石や配管が並ぶ実験ホール、実験の制御室などをめぐり、研究に実際に使われている装置と検出器を間近に見ることができました。
見学の前に、自分たちで検出器を組み立て、スペクトルを読んでいると、「あの装置は何を測るために、どう放射線を捉えているのか」という見え方が変わってきます。見学をただ眺めて終わりにせず、手を動かした体験と一続きにしたことで、理解がいっそう深まる機会になったと考えています。
結果を持ち寄り、根拠をもって発表する
午後の最後は、各グループの測定結果の共有です。すべてのグループのスペクトルを大きなスクリーンに並べ、グループごとに「A〜Dはそれぞれ何だと考えたか」を、その理由とともに発表しました。同じ4つの試料を測っても、ピークの出方や結論に至る道すじがグループによって異なる点も、このワークショップのおもしろいところです。
1日で終わらせず、自宅での測定へつなげる
大阪大学SEEDSプログラムは、JST(科学技術振興機構)の次世代科学技術チャレンジプログラム(STELLA)に採択され、今年度から「SEEDSチャレンジコース」を開設しています。今回のワークショップは、このコースとも連携して実施しました。
チャレンジコースでは、このワークショップを単発のイベントで終わらせません。一部の参加生徒は、組み立てた検出器を持ち帰り、自宅で身の回りの放射線を測定します。そして、第2回・第3回の対面プログラムに測定データを持ち寄り、身の回りのものについてどんな分析ができたかを、参加者どうしで議論を深めていく予定です。
加速キッチンは、これまで全国の中高生に検出器を貸し出し、自宅や学校での測定を支えてきました(探究プログラムの詳細)。今回のように、自分で作った検出器を使って、自宅で放射線を測るという実践的な取り組みを、大阪・関西エリアでも継続していきます。
用語の説明
大阪大学が高校生を対象に実施する、科学技術人材育成のためのプログラム。大学の研究環境に触れながら、生徒が自ら課題を設定して研究に取り組む機会を提供しています。今年度からは、JSTの次世代科学技術チャレンジプログラム(STELLA)に採択された「SEEDSチャレンジコース」も開設しています。seeds.osaka-u.ac.jp
大阪大学の附置研究所のひとつで、サイクロトロンなどの加速器を使った原子核・素粒子の研究が行われている拠点。大阪府吹田市の吹田キャンパスにあります。
CsI(ヨウ化セシウム)の結晶は、放射線が当たると光ります。この光を電気信号に変えて測ることで、放射線の数と、そのエネルギーを調べられます。このように放射線で光る物質を「シンチレータ」と呼びます。
ガンマ線のエネルギーごとに、検出した数を並べたグラフ。放射性物質ごとに出てくるガンマ線のエネルギーが決まっているため、グラフに現れる山(ピーク)の位置から、どんな物質が含まれているかを推定できます。
モナズ石は、トリウムなどを含むリン酸塩鉱物。人形石は、岡山県と鳥取県の県境にある人形峠で見つかった、ウランを含む鉱物です。湯の花は、温泉に溶けていた成分が沈殿してできた結晶で、温泉によっては微量の放射性物質を含みます。いずれも、ごく弱い放射線を出す、身近な試料です。
加速キッチンは宇宙・素粒子分野を自分たちの力で探究できる世界をつくることを使命として、理工学系や様々な分野の大学生・大学院生を中心として活動しています。この活動は徐々に広がり現在では世界でも最大の素粒子探究ネットワークとなりました。素粒子を測定してその極小の世界の性質を調べたい中高生のために安価で手軽に使える素粒子検出器を配布し、研究者や様々な市民科学プロジェクトと中高生をつなぎ、世界中の研究者や中高生と共同研究をするきっかけを提供しています。accel-kitchen.com
加速キッチンについて
加速キッチンは、中高生に素粒子検出器を無料で貸与し、研究機関と連携した宇宙・素粒子の探究活動を支援する組織です。これまで300台超の検出器を貸し出し、200名以上の生徒の探究を支えてきました。参加費は無料です。
本件に関するお問い合わせ先
- 加速キッチン合同会社 広報担当:須藤舞子
TEL:03-4500-0403/E-mail:info@accel-kitchen.com - 当日の写真のご提供、代表・田中香津生へのインタビュー手配、活動内容に関するご質問にも対応します。