1907年、気球レースの会場でふくらむガス気球(セントルイス)

RECIPE01

宇宙線は、どうやって見つかったのか

「電気が勝手に逃げる」という長年のなぞを、気球で空に上がって解いた人たちの話。

話し手 かづお 聞き手 ふーか

写真:Harry Dudley / Public domain

この回のレシピ

目に見えない宇宙線は、どうやって見つかったのか。はじまりは、教科書でおなじみの検電器が「なぜか勝手に閉じていく」という小さななぞでした。エッフェル塔にのぼり、水に沈め、ついに気球で5000メートルの上空へ。予想と違う結果を「失敗」にしなかった人たちが、宇宙から降る粒子にたどりつくまでの物語です。

調理時間
21:49
盛りつけ
7章・図12点・用語23語
つくる人
かづお + ふーか

おもな材料

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動画でも見られます図解とアニメーションつき

第1回 宇宙線は、どうやって見つかったのか——気球で、空の上への動画のサムネイル
音声と同じお話に、図解とアニメーションをつけた動画です(約22分)。YouTube で開く

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かづおふーか点線=用語解説へ

CHAPTER01

検電器が、勝手に閉じていく

ふーか

「加速キッチンの素粒子・宇宙の話」。聞き手のふーかです。

かづお

加速キッチンのかづおです。

ふーか

この番組では、宇宙線1や素粒子2にまつわるお話をしていきます。今回のテーマは「宇宙線は、どうやって見つかったのか」です。かづお先生、よろしくお願いします。

かづお

はい、よろしくお願いします。

かづお

宇宙線が決定的に見つかったのは1912年と言われていて、気球3での観測でした。でも、そのずいぶん前から「なんか宇宙から降ってるんじゃない?」という話はあったんです。まず、最初に何から疑いが出てきたのか、というところから話していきたいと思います。

ローマ大学に保存されている箔検電器。円筒の窓の中に金箔が見える
大学に残る箔検電器
1901年の入門書にのった、手作りの箔検電器。2枚の箔が開いている
1901年の本にのった手作りの検電器
FIG.01箔検電器。帯電させると2枚の箔が開き、時間がたつと少しずつ閉じていく。画像:Setreset and Marco Angelucci / CC BY-SA 3.0(トリミング・縮小)Harry Edwin Hadley / Public domain

かづお

一番最初に「これおかしくない?」となったきっかけは、検電器4です。聞いたことありますかね。筒の中に金属の箔がY字に広がっているようなやつで、学校で習うんじゃないかな。帯電させた棒を近づけると、この箔がピッと広がって——

読み込み中…

FIG.02さわってみよう:帯電させて、まわりの放射線を変えると、箔の閉じる速さが変わる。

ふーか

瓶みたいな入れ物の中に、Y字を逆さにしたような絵が描いてあるやつですかね。

かづお

実は、一番最初に放射線5を定量的に測る道具が、あれだったんです。どれくらい帯電しているか、電位を測るための装置なんですが、しばらくするとだんだん閉じてくるんですよ。

かづお

なんで閉じるのか。シンプルな理由は、電気が外に逃げていくからです。絶縁が悪いと電気の通り道ができてしまう、というのがひとつ。もうひとつは、いくら絶縁をちゃんとしても、どうしても閉じてしまう部分があるんです。

かづお

その理由を考えたとき、「多分これ、放射線じゃないか」と言われていました。放射線が中の空気に当たって電離6させ、その電離によって、帯電している電気が外に逃げていく、という考え方です。

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FIG.03放射線が空気を電離 → できたイオンが箔の電気を打ち消して、箔が閉じる。

かづお

結果的に、これは本当でした。実際に放射線の線源を持ってくると、閉じるスピードが変わるんです。線源がなくてもゆっくり閉じるのは、たぶん地面などから出ている自然の放射線7のせいだろう、と言われていたんです。

ふーか

確かに、検電器は、指を近づけて触れさせると電気が逃げて箔が閉じる、というイラストを見た気がします。それが触れていなくても自然に抜けていくというのは、昔の人から見たらすごく不思議ですよね。「なんで?」と言われても、どう説明していいかわからない。

実験室のピエール・キュリーとマリ・キュリー
FIG.04実験室のピエール・キュリーとマリ・キュリー(1904年ごろ)。放射線が見つかったばかりのころで、まだ誰もその正体をよく知らなかった。写真の装置も、空気の電離を測って放射線を調べるものだった。画像:Unknown photographer / Public domain

ふーか

それが放射線のせいだ、ということで、昔の人もみんな納得したんですかね。

かづお

いえ、納得というわけでもなくて。これが見つかったのは1900年あたりで、いわゆるキュリー夫人8たちが放射線を見つけたのとほぼ同じタイミングなんです。あちらが1896年とか98年と言われていて、検電器で「あれ、だんだん閉じるぞ」と言っているのは、ほんの数年以内の話なんですよ。

かづお

なので、まだ人間が放射線についてちゃんとした背景知識を持っていない時期で、「多分そうなんじゃないか」と言われつつも、という状況でした。

CHAPTER02

エッフェル塔にのぼってみた

閃ウラン鉱(ピッチブレンド)の標本
FIG.05閃ウラン鉱(ピッチブレンド)。地面の岩石には放射線を出すものがふくまれている。上にのぼるほど、その放射線は届かなくなるはず。画像:James St. John / CC BY 2.0

かづお

じゃあ本当に地面から出ているのか。シンプルなテストは、「地面から離れればいいんじゃない?」ということです。

ふーか

そうですよね。地面から放射線がわーっと出ていたとしても、地面の影響が来ないだろうなっていう高いところまで行けば、実証できそうな気がしますね。

かづお

そうなんですよ。当時、一番高いところはどこだろうって色々考えた結果、まず最初にやられたのがエッフェル塔9なんですよ。

ふーか

その頃、エッフェル塔ってあったんですね。

テオドール・ヴルフ(1910年)
FIG.06テオドール・ヴルフ。1910年、自分で改良した検電器を持ってエッフェル塔の上で測定した。画像:SJ Munich / Public domain

かづお

1910年に、エッフェル塔に登って測る実験が行われました。私もパリでエッフェル塔に登ったことがありますが、今からすればそこまで高い塔ではなく、ランドマークとして有名ですよね。でも当時からすると、とんでもないタワーなんですよ。

かづお

1910年にあれに登るのは、今でいうとスカイツリーに登って実験するのに相当します。

ピサの斜塔
ピサの斜塔 約56m
エッフェル塔
エッフェル塔 約300m
東京スカイツリー
スカイツリー 634m
FIG.07ピサの斜塔、エッフェル塔、東京スカイツリー。塔の歴史は、実験の歴史でもある。画像:Saffron Blaze / CC BY-SA 3.0(トリミング・縮小)Benh LIEU SONG / Public domainKakidai / CC BY-SA 3.0(トリミング・縮小)

ふーか

エッフェル塔の上で測ったら、検電器の箔はちゃんと閉じずに、ずっと開いたままだったんですか?

かづお

それがそうでもなかったんです。閉じるスピードから計算できる「空気がどれくらい電離するか」という値、電離度6があるんですが、地面の放射線だけが原因なら、塔の上ではほぼゼロになるはずでした。ところが実際は、地上の半分ぐらいだった。つまり、思ったより減らなかったんです。

ふーか

じゃあ、閉じちゃったんですかね。

かづお

そうなんです。思ったより閉じてしまったんですよ。遅くはなったけれど、閉じてしまいました。

ふーか

じゃあ、上に行った影響はなくはないけれど、予想とは全然違った。もうちょっと長く開いているはずだったのに、という感じですかね。

かづお

もし地面がすべての原因だったら、減ってほとんど見えなくなるはずですから。

かづお

そうならなかったので、仮説として「宇宙から何かが降ってきているのが見えている説」とか「部材の中に同位体10が入っている説」とか、いろんなことが考えられます。少なくとも当時、「あれ、おかしくね?」という状況にはなった、ということですね。

CHAPTER03

予想と違ったら「失敗」? 水に沈めてみた

ふーか

じゃあ地面のせいじゃないとして、でも変わらないとなったときに、昔の人は「別の原因があるのか、次はどうしよう」という話になると思うんですけど。

かづお

これ、すごく大事な気がしています。加速キッチンの中高生だと、多くの場合どうなるかというと、「予想と違ったので実験は失敗しました」と書くんですよ。

ふーか

測り方がおかしかったと思います。

かづお

もっと正確な装置があればよかった、とか。

ふーか

絶対、私も書くと思います。

かづお

私、そういうのを見ると「その言い方はよくない」とすごく言うんですけど。

かづお

予想と合うことを目指す実験って、物理実験としてやっぱり変ですよね。予想と違ったのであれば、もちろん手法や装置に問題がないかを真摯に見ることは大事です。でも、それを見た上で合わないときに「失敗だった」と言うのはよくない。なぜなら、そもそも宇宙線はそこから見つかっているからです。

かづお

じゃあどうすればいいか。今のテクノロジーの限界、つまり当時でいうと検電器しかない、今でいうと中高生には手のひらサイズの検出器しかない、という中で、次に何ができるかを考えるのが、すごく大事だと思うんです。そこで当時の人が何をしたかというと、次は検電器を水に沈めた11んですよ。

ふーか

周りのものに影響されない状態だったらどうだろう、ってことですか?

かづお

まさに。上に持っていくというのは、地面の放射線が上まで届かないよね、ということです。とはいえ空気は密度が大きくないので、地面の放射線もそこそこ届き得るわけですよね。

1910年、測定をするドメニコ・パチーニ
FIG.081910年、測定をするドメニコ・パチーニ。翌1911年には、検電器を水の中に沈めて測った。水は地面からの放射線をさえぎる。画像:Pacini family / Public domain

かづお

もうひとつの方法が水です。エッフェル塔の高さまで沈めることはできなくても、数メートル沈めるだけで十分な放射線の遮蔽12になり得ます。しかも、エッフェル塔が何でできているかはわからないけれど、水は何でできているかよくわかっているので、切り分けができる。周りに何もない、ちゃんとシールドされた状態で測れる、ということで水に沈めたんです。

かづお

でもこの流れは、加速キッチンの中でも十分起こりうる話なんですよ。彼らもいろんな制限がある中でやっています。……まあ、水に沈めたら壊れる、と私がブーブー言うので、やや沈めづらい部分はあるんですけど(笑)。それでも、水に沈めてみるというのは、発想としてすごく参考になるし、勉強になると思うんです。

かづお

本当ならほぼゼロになるはずなのに、変わらなかったんです。

かづお

ここもやっぱり大事なところで。今の我々は宇宙線があるのを知っているから、「宇宙から来ている」という結論になってしまいそうですが、ここからまず言えるのは、「めっちゃ通り抜ける放射線がありそう」ということなんです。

かづお

3メートルの水は、当時の発想では、いわゆる自然放射線は突き抜けないだろうと言われていました。でも突き抜ける放射線がありそう、ということがここから分かってきた。それに、地上から出ているなら離れれば減るはずなのに減らないので、やっぱり上から来ているんじゃないか、という推察もちょっとある。そんな状況でした。

かづお

ここまで来ると、やっぱり本腰を入れて調べたいとなって、「じゃあ気球でやりましょう」という話になっていった、ということですね。

CHAPTER04

気球で高度5000メートルへ

かづお

当時は、今みたいに放射線の計算ができて自信を持てる状況ではなく、「本当に地上から届かないのか」といっても、放射線の相互作用の知識が確立していたわけではありません。実はその計算が間違っている可能性もある。いろんなことを考えて、「さすがにこれは届かないよね」というところまで離れたかったんです。

かづお

当時、今でもそうですけど、そんなに高いものはありません。今なら飛行機に乗れば一発かもしれませんが、じゃあ気球に乗りましょう、と。気球なら当時でも数千メートルの高さまで行けたので、まず一回やってみましょう、ということで、高度5キロ、5000メートルのところまで気球で行って測りました。

ふーか

気球に乗せるとなると、上は風が強かったりすると思うので、検電器だけ乗せて持っていっても、どのあたりで急に閉じたのかも見えないですよね。きっと誰か、検電器を押さえる係とか観測係みたいな人がいたんですよね。

1912年8月、気球飛行から戻ったヴィクトール・ヘス(かごの中央)
FIG.091912年8月、気球飛行から戻ったヴィクトール・ヘス(かごの中央)。高度5,000メートルをこえる上空で測定した。画像:Unknown author / Public domain

かづお

そうです。研究者が乗っていました。当時ヘス13という人がやったんですが、

かづお

でも、そこまで行ったからこそなんです。エッフェル塔くらいの数百メートルだと、宇宙線はもうシャワー14としてできあがってしまっているので、そんなに増えない。5キロとか10キロとか行くと、確かに増えるんですけど。

CHAPTER05

上空では、2倍の速さで閉じた

かづお

だから本当は、エッフェル塔に登って「うわ、めっちゃ増えた」となれば「宇宙から来てる」と言えたんですが、エッフェル塔では半分になった、つまり減っていました。ところが気球で5000メートルまで行くと、これが倍になるんですよ。

ふーか

倍になるっていうのは、何が倍になったんですか?

かづお

これがポイントで、さっき言った電離度6です。

ふーか

地上で実験したときよりも、すぐパタンって閉じちゃった。

かづお

そうそう。さすがに5000メートルまで行って倍早くパタンと閉じるということは、「これは何か上から来てるよね」となりますよね。ヘスさんは、そこから2年間でトータル7回、気球に乗っています。

ふーか

寒かったり、酸素が少なかったりする思いを、1年間でそんな7回も?

かづお

2年間ですね。2年間で7回。よく「物理実験は大変」と我々は言っていますけど、当時はちょっと違って、研究を始めたら気球に乗って寒いところに行かなきゃいけない、という斬新なブラックさがありますね(笑)。

ふーか

5000メートルって、富士山よりももっと上ってことですよね。そんなところに2年間で7回も。

読み込み中…

FIG.10気球をのぼらせてみよう:高度と「電離の強さ(検電器が閉じる速さ)」の関係。

かづお

ところがその後、1913年から、今度はまた別の人15が「これはまだ決定的じゃない」と言って、9200メートルまで行きます。

ふーか

倍? 倍の高さ!

かづお

エベレストより高いところまで行って、電離度、つまりどれくらい早く閉じるかが、10倍になったんです。10倍も早く閉じるのは明らかに異常なので、どう考えても宇宙から何か来ているだろう、とこれでかなり決定的になりました。そんな話です。

CHAPTER06

ノーベル賞まで、20数年

ふーか

ヘスだけじゃなくて他の人もやって、ちゃんと証明できたから、もう「宇宙線発見」って言っていいんですかね?

かづお

これはですね、さっきお話ししたように、ノーベル賞16が実際に取れるまでに20数年かかっているんですが、この間にいろんな研究が行われた、というのが大きいと思っています。

ふーか

まだやることがあるんですか?

かづお

まだ証明にはなりません。最終的にノーベル賞を取ったのは、このヘスの気球の実験と、もうひとつ、アンダーソン17という研究者が宇宙線の中から陽電子18、つまり初めての反物質19の粒子を見つけた実験で、宇宙線の研究として両方が同時に受賞したんです。そこまで24年かかっています。

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FIG.11発見からノーベル賞まで。なぞが解けるまでに、たくさんの人がリレーしてきた。

かづお

というのも、さっきの実験で「宇宙から何か来ていて、それはめちゃくちゃ貫通力が高い」ということはわかったんですが、今のところ謎の粒子なんですよね。一体どうして増えているのかもよくわからないし、無限に上がっていったら無限に増えるのか、という疑問もあります。

かづお

この粒子がどういうふうに降ってきて、地上でどんな性質を持っているのか、も謎なわけです。この20年の中で、ちょうどGM管20という、ちゃんと数が数えられる検出器が出てきて、もっときちんと測定ができるようになりました。

かづお

また、コインシデンス21という概念が出てきて、「同時に2つの場所に来ているから、これはシャワー14なんじゃないか」ということが分かってきました。いろいろストーリーがあるんですけれども、そのあたりはまた次回ということにしましょうか。

ふーか

いやー、今の段階だと、宇宙から降ってくる謎のものがあって、再現性は確かに、気球に何回も乗れば同じように見えるけれど、まだ正体不明。謎のお化けのしわざといっても過言ではない状態ですね。

かづお

それがこの時代の素粒子物理のロマンだなという気がしています。粒子の発見が何年かに一回ポンポンポンと起こっていて、研究者として一番、分野を作っていく楽しい時代です。その時代が、加速器22がないのに生まれているというのが、やっぱりおもしろいなと思います。

かづお

結局、結論はミューオン23だったわけですが、ミューオンを作るような技術は当時の人間には一切ありません。それでもミューオンの研究ができたり、反物質を作る技術は当時ないのに、宇宙線の中から陽電子が見つかったりしたんです。

かづお

自然の加速器としての宇宙線があって、それを使うことで、我々が人工的にそれを作れるようになるはるか手前から、この分野が盛り上がって、素粒子物理学が確立していきました。それがちょっとエモいなと思っているので、そんな話もまたできたらなと思っています。

CHAPTER07

エンディング

ふーか

楽しみですね。見えないものが粒子だったと分かったり、陽電子っていう、あんまり聞いたことのない謎の物質の発見にまでつながったり。それがどうつながるのか気になるところですが、それは次回のお楽しみですね。

ふーか

はい、じゃあ今日の話はここまでということで。かづお先生、ありがとうございました。

かづお

ありがとうございました。

ふーか

この番組では、みなさんからの質問を募集しています。概要欄のフォームから質問したい内容を送ってください。番組の中でお答えしていこうと思います。

霧箱の中に見える放射線の飛跡(アルファ線とベータ線)
FIG.12霧箱の中に見える放射線の飛跡(太く短いのがアルファ線、細く長いのがベータ線)。宇宙線もこうして見ることができる。いまは、中高生が自分の家で宇宙線を測れる時代。画像:Bionerd / CC BY-SA 3.0(縮小)

ふーか

さらに加速キッチンでは、中学生・高校生に宇宙線の検出器を無償で貸し出しています。気になった方は、加速キッチンのホームページを見てみてください。

ふーか

この番組をフォローしておくと、新しい回のお知らせが届きます。次回は「宇宙線って、どれくらい降ってきているの?」という内容をお送りします。お相手は私、ふーかと——

かづお

かづおでした。

ふーか

ありがとうございました。

GLOSSARY

用語集本文の点線のことばを、もう少しくわしく

  1. 01

    宇宙線うちゅうせん

    宇宙から地球に降りそそぐ、とても大きなエネルギーをもった粒子のこと。大気にぶつかると新しい粒子のシャワーを作り、その一部は地上にいる私たちの体もいつも通り抜けています。「線」とついていますが、正体は光ではなく粒子です。

    ↩

  2. 02

    素粒子そりゅうし

    これ以上分けられない、物質をつくるいちばん小さな部品のこと。電子やクォーク、ミューオン、ニュートリノなどがあります。

    ↩

  3. 03

    気球ききゅう

    熱した空気や軽いガスで浮かぶ乗りもの。100年前、飛行機は生まれたばかりで、人と測定器をのせて数千メートルまで上がるのはむずかしく、気球は上空で測定できる数少ない手段でした。

    ↩

  4. 04

    検電器(箔検電器)けんでんき

    金属の棒の先に、薄い2枚の金属の箔(はく)をつるした道具。電気をためると同じ種類の電気が反発して箔が開き、電気が逃げると閉じます。閉じる速さから「空気がどれくらい電気を通しやすくなっているか」が分かるので、初期の放射線の測定器として使われました。

    ↩

  5. 05

    放射線ほうしゃせん

    原子核がこわれるときなどに飛び出す、エネルギーの高い粒子や光(電磁波)のこと。物に当たると原子から電子をはじき飛ばす(電離させる)力があります。

    ↩

  6. 06

    電離(電離度)でんり

    原子や分子から電子がはじき出されて、プラスとマイナスの電気をもった粒(イオンと電子)に分かれること。空気が電離すると電気が流れやすくなり、検電器の箔が閉じていきます。番組の「電離度」は、どれくらいの速さで空気が電離しているかを表す量のことです。

    ↩1↩2↩3

  7. 07

    自然放射線しぜんほうしゃせん

    地面の岩石や空気中のラドン、食べ物、そして宇宙線など、自然の中にもともとある放射線のこと。私たちはふだんから少しずつ浴びています。

    ↩

  8. 08

    キュリー夫人(マリ・キュリー)きゅりーふじん

    放射能の研究で知られる科学者。1896年にベクレルがウランから出る放射線を見つけ、1898年にキュリー夫妻がポロニウムとラジウムを発見しました。検電器の「なぞの放電」が話題になったのは、まさにその直後の時代です。

    ↩

  9. 09

    エッフェル塔の実験(ヴルフ)えっふぇるとう

    ドイツの物理学者テオドール・ヴルフは、自分で改良した検電器を持ってエッフェル塔(約300m)に登り、地上との違いを測りました。1910年の観測で、地上で1cm³あたり毎秒約6個だったイオンの生成が、塔の上では約3.5個。地面が原因なら大きく減るはずが、思ったほど減りませんでした。

    ↩

  10. 10

    同位体どういたい

    同じ元素なのに、原子核の中の中性子の数がちがうもの。その中には、放射線を出してこわれる「放射性同位体」もあります。建物の材料に含まれていると、そこから放射線が出ます。

    ↩

  11. 11

    水に沈める実験(パチーニ)ぱちーに

    イタリアの物理学者ドメニコ・パチーニは1911年、検電器を海や湖の水の中(約3m)に沈めて測りました。地面から遠い海の上でも放射線があり、水に沈めると約20%減りました(番組では「あまり変わらなかった」と話していますが、実際には減っていました)。つまり、地面ではなく上のほうから来る放射線がある、とパチーニは考えました。論文の英訳が公開されています。

    ↩

  12. 12

    遮蔽しゃへい

    放射線をさえぎること。水やコンクリート、鉛などの厚い物質を間に置くと、放射線はそこで止まったり弱まったりします。数メートルの水は、地面から来る放射線をさえぎるには十分な厚さです。

    ↩

  13. 13

    ヘス(ヴィクトール・ヘス)へす

    オーストリアの物理学者。1911年に2回、1912年に7回、気球に乗って上空で放射線を測り(番組では「2年間で7回」と話していますが、7回は1912年の4月から8月までの回数です)、1912年8月の飛行では高度約5,300mに到達。高く上がるほど電離が増えることを見つけ、「放射線は上(宇宙)から来ている」と結論しました。1936年にノーベル物理学賞を受賞。

    ↩

  14. 14

    空気シャワーくうきしゃわー

    宇宙から来た1個の粒子が大気の原子にぶつかって、たくさんの新しい粒子を次々に作り、シャワーのように広がって地上に降ってくる現象。地上に届く宇宙線の多くは、このシャワーの子どもたちです。

    ↩1↩2

  15. 15

    コールヘルスターこーるへるすたー

    ドイツの物理学者ヴェルナー・コールヘルスター。1913〜1914年に気球で高度約9,300m(番組では「9200メートル」)まで上がり、ヘスの結果を確かめて、さらに高いところで電離が大きく増えることを示しました。地上の何倍になったかは、資料によって6〜10倍と書き方に幅があります。のちにGM管を使って、宇宙線が電気をもった粒子であることも示しています。

    ↩

  16. 16

    1936年のノーベル物理学賞のーべるしょう

    「宇宙線の発見」でヘスが、「陽電子の発見」でアンダーソンが、1936年に同時に受賞しました。ヘスの気球実験(1912年)から数えると24年後のことです。番組の「さっきお話ししたように」は、編集で短くした冒頭の雑談(受賞は1936年、という話)を指しています。

    ↩

  17. 17

    アンダーソンあんだーそん

    アメリカの物理学者カール・アンダーソン。1932年、霧箱で宇宙線を観察していて、電子と同じ重さでプラスの電気をもつ粒子=陽電子を見つけました。1936年には、ミューオンも宇宙線の中から見つけています。

    ↩

  18. 18

    陽電子ようでんし

    電子とまったく同じ重さで、電気がプラスになった粒子。電子の「反粒子」で、人類が初めて見つけた反物質です。いまは病院のPET検査にも使われています。

    ↩

  19. 19

    反物質はんぶっしつ

    ふつうの物質と重さは同じで、電気などの性質が逆になった「反粒子」でできた物質。物質と出会うと、ともに消えて光のエネルギーになります。

    ↩

  20. 20

    GM管(ガイガー=ミュラー計数管)じーえむかん

    放射線が1個通るたびに「カチッ」と電気のパルスを出す検出器。1928年に完成し、放射線を「1個、2個」と数えられるようになりました。

    ↩

  21. 21

    コインシデンス(同時計数)こいんしでんす

    離れた2つ以上の検出器が「同時に」反応したときだけ数える方法。同じ粒子(や同じシャワー)が両方を通ったことがわかります。ボーテとコールヘルスターの実験(1929年)で、宇宙線が電気をもつ粒子であることが示されました。加速キッチンの検出器でも使える考え方です。

    ↩

  22. 22

    加速器かそくき

    電気の力で粒子をほぼ光の速さまで加速し、ぶつけて新しい粒子を作ったり調べたりする装置。宇宙には粒子をとても高いエネルギーまで加速する天体があり、そこから届く宇宙線は、人間が加速器を作るずっと前から、自然が用意してくれた高エネルギーの粒子でした。番組の「自然の加速器としての宇宙線」は、この意味です。

    ↩

  23. 23

    ミューオン(ミュー粒子)みゅーおん

    電子の約200倍の重さをもつ、電子の仲間の素粒子。地上に届く宇宙線の主役で、手のひらを1分間に約100個通り抜けています。1936〜37年に宇宙線の中から見つかりました。

    ↩

REFERENCES

参考資料もっと知りたくなったら

画像・動画のクレジット

このページの写真や図は、Wikimedia Commons などで公開されている、パブリックドメインまたはクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのものを使っています。

  1. 1907年、気球レースの会場でふくらむガス気球(セントルイス)Harry Dudley / Public domain
  2. ローマ大学に保存されている箔検電器。円筒の窓の中に金箔が見えるSetreset and Marco Angelucci / CC BY-SA 3.0(トリミング・縮小)
  3. 1901年の入門書にのった、手作りの箔検電器。2枚の箔が開いているHarry Edwin Hadley / Public domain
  4. 実験室のピエール・キュリーとマリ・キュリーUnknown photographer / Public domain
  5. 閃ウラン鉱(ピッチブレンド)の標本James St. John / CC BY 2.0
  6. テオドール・ヴルフ(1910年)SJ Munich / Public domain
  7. ピサの斜塔Saffron Blaze / CC BY-SA 3.0(トリミング・縮小)
  8. エッフェル塔Benh LIEU SONG / Public domain
  9. 東京スカイツリーKakidai / CC BY-SA 3.0(トリミング・縮小)
  10. 1910年、測定をするドメニコ・パチーニPacini family / Public domain
  11. 1912年8月、気球飛行から戻ったヴィクトール・ヘス(かごの中央)Unknown author / Public domain
  12. 霧箱の中に見える放射線の飛跡(アルファ線とベータ線)Bionerd / CC BY-SA 3.0(縮小)

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